原料が毎年違うのに、なぜRIKKAは自社で製麦するのか
前回で書いた通り、
RIKKAは「味を揃えすぎない」という選択をしました。
それは、
不耕起有機栽培の揺れを
なかったことにしない、という姿勢です。
すると、
次に避けて通れない問いが現れます。
原料が毎年違うのに、
なぜ外部に任せず、自社で製麦するのか。
製麦は「安定させる工程」だと教わってきた
一般的に、製麦はこう捉えられています。
- 原料のばらつきをならす
- 醸造しやすい状態に整える
- 品質を均一にする
つまり、
揺れを吸収する工程です。
もし目的が
「毎年同じ味のビールをつくる」なら、
経験豊富な外部製麦所に任せる方が
合理的です。
それでも、違和感が残った
しかし、
修士論文で
不耕起有機栽培の結果を追ってきた私たちには、
ひとつの違和感がありました。
畑では、
- 揺れを観察し
- 変化を記録し
- そこから考察する
という姿勢を取っている。
それなのに、
製麦の段階で
すべてを均一化してしまう。
それは、
畑で起きていることを
途中で見えなくしてしまう行為に
思えました。
揺れを「消す」か、「読む」か
ここで、
考え方が大きく分かれます。
- 揺れを消して、安定を取る
- 揺れを読み取り、次に活かす
RIKKAは後者を選びました。
自社製麦は、
揺れをなくすためではなく、
揺れを観測するための工程
だと考えたのです。
製麦すると、違いがはっきり見える
自分たちで製麦をすると、
原料の違いが
より鮮明に表れます。
- タネの吸水具合
- 発芽の揃い具合
- 根の伸び方
- 乾燥時の反応
これらは、
分析値だけでは分かりません。
畑の状態が、
手触りとして戻ってくる。
この感覚は、
外部委託では得られませんでした。
製麦は、農業と醸造の間にある「思考の場」
ここで初めて、
製麦の位置づけが変わります。
- 農業 → 原料
- 原料 → 製麦
- 製麦 → 醸造
という分業ではなく、
農業と醸造の間で、
考えるための場所。
それが、
RIKKAにとっての製麦でした。
非効率を選んだ理由
自社製麦は、
- 手間がかかる
- コストが高い
- 安定しにくい
正直に言えば、
事業としては
不利な点が多い。
それでもこの方法を選んだのは、
第3回から続く問い、
「完成した正解を売りたいのか、
問い続けるプロセスを引き受けたいのか」
この問いへの答えが、
はっきりしていたからです。

