クラフトビールが高い理由とは?ブルワリーが本音で解説
「330mlのビールが2,000円?」
イベントで価格をお伝えすると、驚かれることがあります。
その反応は、決して間違っていません。
私自身も、もし畑も醸造所も見たことがなければ、「高い」と感じたと思います。
では、なぜクラフトビールは高いのでしょうか。
そして、なぜ私たちは、その価格で販売しているのでしょうか。
今回は、実際にビールをつくっている立場から、できるだけ正直にお話ししたいと思います。

理由① 大量生産ではないから
最も大きな理由は、生産規模です。
大手ビールメーカーでは、一度に数万リットル、時には数十万リットルという単位でビールを製造しています。大量生産することで、設備投資や人件費を薄めることができ、一本あたりの価格を抑えることができます。
一方、多くのクラフトブルワリーは、小規模な設備で少量ずつ醸造しています。
例えばRIKKAでは、一回の仕込み量は約100リットルです。
同じ設備投資をしても、生産量が少なければ、一本あたりのコストはどうしても高くなります。
つまり、クラフトビールが特別高いというよりも、むしろ大量生産されたビールが非常に効率的に製造されている、と考えた方が正しいのかもしれません。
理由② 原料だけでなく、畑そのものを育てているから
RIKKAでは、自ら大麦を栽培しています。
しかも、その方法は不耕起有機栽培です。

土を耕さず、化学肥料や農薬に頼らず、土壌生態系をできるだけ壊さない農業を目指しています。
農業の現場では、
- 農業者の高齢化
- 担い手不足
- 耕作面積の拡大
- 農業資材価格の高騰
といった課題が深刻化しています。
その中で私たちは、不耕起有機栽培が農業の新しい選択肢になるのではないかと考えています。
土壌は単なる生産基盤ではありません。
微生物や昆虫、植物の根が関わり合う、一つの生態系です。
私たちは毎年、大麦だけではなく、その土壌そのものを育てています。
ビールの価格には、その畑を維持し、未来へつないでいくためのコストも含まれています。
理由③ 製麦まで自分たちで行っているから
実は、ビールづくりにおいて非常に重要でありながら、あまり知られていない工程があります。
それが「製麦(モルティング)」です。

収穫した大麦は、そのままではビールをつくることができません。
大麦を発芽させ、乾燥させ、糖化できる状態にする必要があります。
この工程を製麦と呼びます。
現在、日本国内で自ら大麦を栽培し、さらに自家製麦まで行っているブルワリーは決して多くありません。
RIKKAでは、畑で収穫した大麦を自ら製麦し、その麦芽を使ってビールを醸造しています。
同じ品種の大麦でも、
- 年ごとの気象条件
- 使用する圃場の状態
- 収穫時の状態
によって、毎年状態が変わります。
そのため、吸水時間や発芽条件、乾燥温度を毎回調整しなければなりません。
大量生産された麦芽を購入する方が、効率だけを考えれば圧倒的に合理的です。
それでも私たちが製麦を続けるのは、
畑からグラスまでを一つの流れとして理解したいから
です。
ビールの味は、醸造所ではなく、すでに畑から始まっていると考えています。
理由④ 時間がかかるから
農業は、工場のようにはいきません。
春に種を播いても、収穫できるのは数か月後です。
さらに、その大麦を製麦し、ビールを仕込み、発酵・熟成を経て、ようやく商品になります。
今年播いた種の結果が分かるのは、半年後、あるいは一年後です。
土づくりまで含めれば、その時間軸はさらに長くなります。
私たちは、数か月先だけではなく、数年先の土を見ながら仕事をしています。
クラフトビールの価格には、そうした時間も含まれているのだと思います。
理由⑤ 人の手が入るから
小さなブルワリーでは、多くの工程を人の手で行っています。
原料の栽培、製麦、仕込み、洗浄、瓶詰め、ラベル貼り、出荷。
そのほとんどを少人数で行っています。
効率だけを考えれば、自動化という選択肢もあります。
しかし、人が関わることでしか生まれない品質や表現もあると考えています。
例えば、毎年違う大麦の状態を見ながら製麦条件を調整すること。
発酵の様子を見ながら、そのロットに最適なタイミングを判断すること。
そうした小さな判断の積み重ねが、最終的な味につながっています。
本当に高いのだろうか
それでも、やはりクラフトビールは高いと思われるかもしれません。
ただ、少し違う見方もできるのではないでしょうか。

もし、その一本が、
- 環境を再生する農業を支えているとしたら。
- 地域の農業や風景を未来につなげているとしたら。
- 農家や醸造家の挑戦を応援しているとしたら。
価格だけでは測れない価値が、そこには含まれているのかもしれません。
RIKKAが考えるクラフトビールの価値
RIKKAでは、ビールを単なる商品とは考えていません。
ビールは、土と人、地域と未来をつなぐための媒体だと考えています。
だからこそ、大量生産もしませんし、すべての人に売ろうとも考えていません。
分かりやすい正解はないかもしれません。
それでも、土を育みながらビールをつくり続けることで、新しい価値を提案できると信じています。
もし機会があれば、ぜひ一度、畑を見てからビールを飲んでみてください。
同じビールでも、少し違う味に感じられるかもしれません。



